2021.9.21
ここのところほぼ連日、GMのEV:Boltの火災リコールに関する記事がにぎわっている。
今日のニュースは明るいもので、やっと原因を特定し、対策を決定したというものである。
https://www.autonews.com/regulation-safety/gm-outlines-fixes-bolt-battery-fire-risk
これに基づき、リコールの方針が決定した。以前の情報では、今まで販売した車両全部のバッテリーを交換する方向で動いていたようであるが、上記の記事では、
・2017-2019モデル:バッテリモジュールすべて取り換え
・2020-2022モデル:欠陥バッテリモジュールのみ交換
という方針になっている。10月半ばから実際にリコール作業がディーラで行えるようである。
原因は以前から発表されていたように、バッテリセルの製造上の欠陥が2件あったということである。この二件の欠陥が同じセルにあると、充放電を繰り返している間に電極がショートして火災至るというメカニズムのように記事からは推定される。
対策は当然、製造プロセスを改善することが主となっているはずである。
二次対策として、バッテリの診断ソフトを改善したようである。もし今回のような製造プロセスに起因する不具合の兆候を、バッテリのセルの性能をモニタすることにより検知するというものある。
2017-2019モデルのリコール作業は、診断ソフトのアップデートと、欠陥有り無しに関わらずバッテリモジュール全部の取り換えを行う。
2020-2022モデルのリコール作業は、診断ソフトのアップデートのみが行われ、欠陥が発見されると欠陥モジュールが交換されるという内容になる。
関係者のおそらく不眠不休の対策活動に敬意を表すしかない。7月にリコール発表を行い2ヶ月間強烈なプレッシャーの中、仕事をしてきたものと思われる。何しろ、GMの次世代戦略の要となるEV技術(バッテリ技術)である。
とここまではめでたしめでたしであるが、疑問が残る。
なぜ、2017-2019モデルはモジュール全取り換えなのか?
2020-2022モデルは診断ソフトで欠陥が検出されたモジュールのみである。これで100%安心というからには、2017-2019でモデルでも同じ対策でいいはず。その方がコストが圧倒的に少なくなる。
というのも、もともと火災発生確率が非常に低く、13台/142000台である。ほぼすべての車が対策不要である。対策が必要なのは1万台当たり1台程度である。
全部交換するとなると100万円/台以上のコストがかかる。2017-2019モデルは7万台程度ありそうである。総額700億円以上のリコール費用になる。
もし問題がある車両のみのリコール作業だと7台程度が対象になり、700万円程度でいい。700億円に比べればごみのような数値である。(このほかに、診断作業などの費用は必要であるが)
診断ソフトに100%の自信があれば、迷うことなく全車バッテリ交換などしない。
この辺はGMとLGの間で、駆け引きがあったのであろう。リコール費用の多くは、LGが負担することになっているそうである。
GMは対策内容に一抹の不安を抱えており全部取り換えでなるべくリスクを減らしたい、LGは出費を減らすために対策をなるべくソフトのみにしたい・・・両社の思惑のぶつかり合いがあったと考えるのが妥当であろう。
さて、今回の対策で本当に火が消えるのであろうか?あせったあげく、変に妥協して、推定を交えた間違った判断をくだしたとなるとGMのEV戦略は目も当てられないような状態になるが・・・
結果は一年もたたずに現れる。